覚えている短歌(50首)

これから思い出すかもだから、増やします
出典わからないものがあって、知っている方がおりましたら教えてください

◯綺麗だと思う。美しさと不穏さは紙一重であると感じる

1. 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり/能因法師
小学校で習った。川が錦って、すご! と思った。

2. ガンジスは動詞の川ぞ歯を磨く体を洗う洗濯をする/俵万智『チョコレート革命』
中学校で読んだ。川が動詞!? すご! と思った。

3. 瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり/正岡子規
マグリットの絵みたいなのが思い浮かんだ。

4. ペダルを踏んでわたしを持ち上げるあいだ美容師がふと見る窓の外/福山ろか『眼鏡のふち』
なんてことない瞬間なのにすごい。ハマスフォイの絵みたいなのが思い浮かんだ。

5. 大気圧 薄暗い朝の教室でカルピスウォーター飲むときさえも/渡邊新月『秋を過ぎる』
なんてことない瞬間なのにひどく不安な気持ちになる。

6. 曙(アウロラ)がゆつくりよぎるあひださへ睡りつぱなし 王位は空位/紀野恵『La Vacanza』
壮大だけど結局何も起きてなくてただ綺麗なだけ。

7. 問十二、夜空の青を微分せよ。街の明かりは無視してもよい/川北天華
高校の頃から解けてない。

8. 終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて/穂村弘『シンジケート』
夜バスに乗るたびにこれだって思ってるよ。困ったなあ・・・

9. 若夏の青梅選むこずゑには脳も透きて歌ふ鳥あり/山中智恵子『みずかありなむ』
それは一年で最も美しい季節だろう。

10. どんな目にあいましたかセルレセルナルレ月夜に濡れる青いブローチ/早坂類
あんまり考え過ぎると吸い込まれそう。

11. 晴れ上がる銀河宇宙のさびしさはたましいを掛けておく釘がない/杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』
「たったふたりの短歌チャンネル」で知ったと思う。表記の重要さを思わされたきっかけ。

12. つきの光に花梨が青く垂れてゐる。ずるいなあ先に時が満ちてて/岡井隆岡井隆歌集』収録
若者がずるい対象じゃないのがいいな。

13. 西瓜食べ水瓜を食べわたくしが前世で濡らしてしまった床よ/山崎聡子『青い舌』
主体がその場所からじっと動かない感じが、不穏さなのかな。

◯夏

14. 海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり/寺山修司『十五才』
OPすぎる!

15. 「坂道の向こうに海があるはず」と言って告白を5分遅らす/笹公人『パラレル百景』
遅らせた先を言わなくていいのが短歌の良い所だな。

16. はんこ・カギ 看板が顔を出している夏の道から遠ざかるだけ/谷川由里子『サワーマッシュ』
夏は何かと距離を置かれがちな季節だ。

17. 夏の井戸(それから彼と彼女にはしあわせな日はあまりなかった)/我妻俊樹『カメラは光ることをやめて触った』
これだけの情報なのに、彼らの運命にひどく深く納得する。

18. 学問の自由は、これを保証する。 夏を想って盗電をした/森慎太郎
「盗電」という単語はもうこの歌にとられてしまった!

19. どうしても言わなければならないことが初夏の晩夏のプール・サイドに/青松輝『複数性について』
夏の特性を利用して一首で二つのことについて言っている。

20. ブラスバンドのバスの音ばかり聞こえつつはじめて愛を告げられし夏/小島なおサリンジャーは死んでしまった』
キュンキュンする!

21. 寺山修司知らない君が手を広げ海だよと言う海がはじまる/初谷むい
そして色々なものも同時に始まると思う。

◯緊張する
22. 小さき脳をスライスにして染めているこの学生は茂吉を知らぬ/永田和宏『饗庭』
彼は山中智恵子も知らないだろう。

23. シネマ テロに津波の映像が次いで流れた秋の日だった/酒田現『神戸にて』
映像が枠の中に収められていること。

24. 洗った顔を見ている僕の眼が見えた みんなのリーダーは僕だから撃て/瀬口真司『KILLING TIME』
ひたすらかっこいい

25. 手の中にリアルが? 缶を開けるまで想像していた姿と同じ/中澤系『uta 0001.txt』
缶と手の境界がはっきりしている。

26. スペアミント・ガムを噛みつつわかものがセックスというときのはやくち/村木道彦『天唇』
全ての名詞とその表記の仕方が完璧。

27. 消してきた検索履歴 学校で会おうよ。学校で、また。/仲井澪『指針』
また会えるといいな。

◯なるほどと思う
28. 北山様、北山様と呼ぶ声に痴れてゆくなりChinzanso Tokyo/北山あさひ『崖にて』
眠たくなってきちゃうな。

29. 東京に春の大雪 BBSで出会う4人はバンドをつくる/永井祐『日本の中でたのしく暮らす』
そんなことがあったら、きっといいだろう。

30. 日中のBSに意識が向けばサーフィンの大会がなんとなくわかってきて/工藤吹『Evergreen』
でもきっとこの先昼寝してしまうんじゃないかなという気がなんとなくする。

31. カップ麺待ってるこの数分間が自分の晩年かもな、ふーふー/奥村鼓太郎『ユキハミをつかまえて』
そうかも・・・

32. ヨーカドーにいたら結婚式場の鐘が聞こえた  結婚したな/佐藤翔『エコロジー
そうだな・・・

33. そのときに付き合ってた子が今のJR奈良駅なんですけどね/伊舎堂仁『トントングラム』
そうなんですね・・・

◯友達
34. めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな/紫式部
大学入った後地元の友達のこと考えるとこの歌思い出す。

35. 退屈もvibesだって言う人が僕の友達 Tシャツを干す/川村有史『退屈とバイブス』
わたしもこういう郊外に住んでるHIPHOP好きなイケてるお兄さん(勝手にそう思う)と友達になれたら。

36. 公認会計士の友に「おごるから」と言われ掻っ込むほかなしウニ・イクラ丼/染野太朗『ウニ・イクラ丼』
たしかに、掻っ込むほかはない!

37. 我々は並んで帰る(エロ本の立ち読みであれ五人並んでだ)/しんくわ『卓球短歌カットマン』
字余りにしたかったらしていいんだ! だ!

38. 優先順位がたがひに二番であるような間柄にて梅を見にゆく/荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』
ツイートしたことあるけど北野天満宮でこの歌友達に教えられたの良かった。覚えてないだろうけど。

◯恋あるいは性愛
39. 牛乳が逆からあいていて笑う ふつうの女のコをふつうに好きだ/宇都宮敦『ピクニック』
わたしはというと泣きそうだよ・・・

40. 豚の交尾終わるまで見て戻り来し我に成人通知来ている/浜田康敬
なんかどうしようもなく、生きていくしかないな、という感じ。

41. 喧嘩喧嘩セックス喧嘩それだけど好きだったんだこのボロい椅子/東直子『青卵』
なぜか「NANA」思い出す。

42. 最後までいかずに眠る僕たちのつながっている部品いくつか/枡野浩一『ショートソング』に収録
彼氏が手を出してこないみたいなこと言ってた友達を思い出す。(別れちゃった)

43. 年下も外国人も知らないでこのまま朽ちてゆくのか、からだ/岡崎祐美子
それでも岡崎祐美子みたいな歌が読めるというのは希望かな。

44. パーティーの前にトイレでキスをして後は視線をはづす約束/黒瀬珂瀾『黒曜宮』
ドキドキする。完璧だ!

45. たとへば君ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか/河野裕子
わたしだったら駄菓子屋のガム盗むやうにとか言っちゃうな。

46. 物干し竿長い長いと振りながら笑う すべてはいっときの恋/五島諭『緑の祠』
カメラがゆっくりと遠ざかり、二人の姿はロングショットになる。

47. しあわせにすると言われる しあわせなわたしのいまがちょっと汚れる/廣川環『ばかでかいナン』
わたしはもうちょっと色んなこと考えるべきだな。とこれを読んだ時に思った。